第6回 全身をめぐる血管こそ、美と健康の要 医学博士 すぎおかクリニック 理事長 杉岡充爾 先生

血管内皮細胞を傷つける
4つの原因

- どのような原因で血管は弱ったり、老化したりするのか教えてください。

杉岡先生原因は大きく4つあり、その全てが血管の一番内側にある「血管内皮細胞」にダメージを与えています。4つの原因とは次のようになります。

①酸化
活性酸素が引き起こす血管の「サビつき」で、血管の細胞が酸化するともろくなってしまいます。人間の体はもともと活性酸素が増えすぎないよう抗酸化作用をもっていますが、その働き以上に活性酸素が増えてしまうと酸化がすすんでしまいます。血管のためには活性酸素をいかに抑えるかがポイントになります。

Column活性酸素ってどんなもの?

健康に関連して、近年しばしば問題にされるようになった「活性酸素」とは何か、簡単におさらいしておきましょう。私たちは生きるために外気から酸素を取り込んでいます。もともと酸素は安定的な分子ですが、体内に取り込むとその数%が不安定で他の物質と反応しやすい分子に変化してしまいます。これが活性酸素(フリーラジカル)と呼ばれるもので、その強い酸化力で体に様々な影響を与えます。殺菌作用によって感染を防ぐなど有益な作用があるいっぽう、正常な細胞を攻撃して酸化を進めてしまうという困った面があります。活性酸素が過剰に発生すると、体に備わっている抗酸化作用では抑えきれなくなり、内臓や皮膚など全身にダメージを与え、様々な病気の原因となったり、老化を進めたりしてしまいます。健康のためには活性酸素とそれを抑える抗酸化作用のバランスを正常にしておくことが必要です。

酸化にも関連して、血管にとって重要な物質がありますので、ここで説明しておきましょう。血管内皮細胞から放出されるNO(一酸化窒素)という物質で、これは血管を拡張させる働きをもっていて、血行をよくするためにはなくてはならないものといえます。その他にもNOは血管にとって重要な役割を果たしています。

●NO(一酸化窒素)の働き
・血管を拡張する
・血栓を作りにくくし、血液をサラサラにする
・血管の炎症を抑える
・酸化を抑える
・血管のプラーク(コレステロールのこぶ)の発生を抑える

上記のようにNO(一酸化窒素)は抗酸化にも働くため、活性酸素が増えた時にはそれを消去するために使われてしまいます。すると血管を拡げる作用が弱くなり、血行を滞らせてしまうのです。その意味でも酸化は血管の敵だといえます。

NO(一酸化窒素)の働き

②糖化
体の中のたん白質が糖と結びついて変性してしまう現象です。糖化によって生成される最終糖化産物・AGEsは、強烈に血管を破壊する物質であり、AGEsを増やさない生活を送ることが必要です。
●糖化につきましては、本シリーズ第2回『「糖化」は「老化」』で詳しく解説していますので、そちらもご覧ください。

③炎症
体に傷ができると、それを治す過程でその部分が赤くなりますが、これは炎症反応が起きているためです。血管の壁は血液にぶつかることで常に傷ついており、修復を繰り返していますが、炎症が続き傷だらけでささくれ立ってしまうと、血管はもはや傷を修復できなくなり、やがて詰まるか破れてしまうことになります。

④ストレス
ストレスによって血圧や心拍数が上がっている時、血管は強く緊張し、過剰な収縮状態になっています。収縮した血管に高い圧力で血流がぶつかることで、傷つきやすい状態を招いてしまいます。

以上のような血管への悪影響を極力避けるように日常生活を送ることが、血管強化を進める上で大切です。

今の食生活では
血管への栄養が足りていない!

- 血管に良い生活を送るために食生活を中心にアドバイスをお願いします。

杉岡先生血管に良い栄養素をバランスよく十分に摂ることが大切です。まずたん白質は、血管を構成する材料であり、抗酸化に働く酵素の材料でもありますので、良質のたん白質は絶対に欠かせません。そしてビタミン、ミネラルも大切です。ビタミンCやE、Aは非常に強い抗酸化力をもち、B群は細胞のエネルギー産生に働き、血管内皮細胞のエネルギー産生も担っています。ミネラルには、後で述べる有害な物質のデトックス効果があるものもあります。これら3つの栄養素に加えて、食物繊維も重要です。腸内環境を整える作用があり、不足すると栄養分が吸収されず、血管に良い食品を摂っても役立てられません。そしてもう一つ、ファイトケミカルです。これは植物由来の化合物の総称で、トマトのリコピンやウコンのクルクミンなどたくさんの種類があります。ファイトケミカルは強い抗酸化作用や免疫機能の向上、デトックス作用など、多彩な効果が期待できます。

- 血管に良い栄養素は日頃の食事で十分に摂れていないのでしょうか?

医学博士 すぎおかクリニック 理事長 杉岡充爾 先生

杉岡先生今、多くの人は十分な栄養が摂れていないと思われます。エンプティカロリー(栄養素をほとんど含まないカロリー)という言葉も出てきたように、外食やファーストフードなどの手軽な食事は炭水化物に偏ってしまっています。原因は他にもあって、ビタミンやミネラルの多くは野菜から摂るものですが、それだけではビタミンやミネラルを十分に摂りにくくなっています。また、たん白質も実は十分ではありません。ですから、本当に意識しないと健康的な食事、血管強化につながる栄養は不足してしまうのです。

Column血管の炎症を防ぐ油、誘う油

脂質の摂り方も血管強化には大いに関係します。脂質は細胞膜の大半を占める成分であり、血管内皮細胞も表面は主に油でできています。ですから、脂質の摂り方次第で、膜を強固にすることができ、それによって血管の炎症を防ぐことにつながるのです。食品中の脂質にはいくつかのグループがありますが、細胞膜を強くできるのは「オメガ3」というグループの脂質。青魚に含まれるEPAやDHA、亜麻仁油などがこれに該当します。いっぽう、油の中には炎症を誘発するものがあることも憶えておいてください。「オメガ6」というリノール酸などの一般的なサラダ油に多く含まれる油のグループです。最近ではオメガ3とオメガ6の比率が炎症に関連すると言われていますので、摂取する油についてもバランスを気にしておきたいものです。

- 栄養不足にはどんな対策があるのでしょうか?

杉岡先生ビタミンやミネラルの不足をサプリメントで補うのも有効でしょう。また野菜の食べ方の考え方では、「レインボーダイエット」がもてはやされているように、様々な色の野菜を組み合わせて食べるのもオススメです。野菜はその色によって含まれる栄養素も異なり、たくさんの色の野菜を摂ればそれだけ多種のビタミンやファイトケミカルを体に入れることができます。手軽に野菜を摂る方法としては野菜ジュースもとても良いと思います。ただし気をつけたいのはジュースに含まれる糖です。糖度が高いものを摂り続けると糖化を招き、血管に良いことをしているつもりが逆に悪影響を与えてしまいます。