見た目の老化は糖化の現れ。
アンチエイジングのために血糖を考えましょう

- 肌の色や弾力が変化すると、外見にも影響しそうですね。

八木教授その通りです。糖化ストレスは全身の組織に影響を及ぼしますが、それが一番わかりやすく出てくるのが “見た目の老化”であるといえるでしょう。先に述べたように、糖化ストレスによって、肌の色が徐々に黄褐色に変化してクスミが生じ、弾力性やハリが失われ、さらにAGEsが蓄積した肌はキメがなくなってのっぺりとした状態になります。これらが顔に現れてくると“老けた顔”に見えてしまうのですね。糖化と見た目の関係についての論文もいくつか出ています。事実AGEsが肌に蓄積していたり、血糖値が高かったりすると実年齢よりも老けて見えるという研究結果が報告されています。

- 糖化ストレスで見た目が老けてしまうとは! それを避けるための対策を教えてください。

八木教授糖化ストレスを減らすためにまず大切なのは、体の中の糖、つまり血糖をうまくコントロールすることです。よく、糖尿病の話になると高血糖という言葉が聞かれますが、健康な人でも食事をとれば血糖値が高い状態になります。健康な状態であれば、それを感知した膵臓からインスリンというホルモンが分泌されて、その働きによって血中の糖は細胞に取り込まれ、血糖値が下がっていきます。このように体の中では食事をするたびに血糖値の上がり下がりを繰り返しているのです。しかし、ここで注意が必要なのは食後に起きる血糖値の急な変化です。最近マスコミ等では、食後血糖値の急激な上昇と下降を「グルコース・スパイク」と呼び、よく取り上げるようになりました。下図に示したように、普通の食生活をすれば1日3回の食事の後にグルコース・スパイクが現れます。食後の血糖値が高い状態が続いたり、間食(おやつ)をたくさん食べて何度も血糖値を上げると、体の中では糖とたん白質が結合して糖化反応が進んでしまうのです。ですからグルコース・スパイクをいかに軽減するか、いかに血糖値のピーク(グラフの高さ)を低くし、高血糖の時間を少なくするか、血糖値を上げる回数を適切にするか、要するにグラフに現れたグルコース・スパイクの面積を小さくすることが糖化ストレス対策のポイントになります。

憎きグルコース・スパイクへの対策には、
どう食べる? 何を食べる?

- グルコース・スパイクを軽減するためには具体的にどんな方法がありますか?

八木教授まず一つは運動です。食後30分から1時間くらい経った頃、すなわち血糖値が最も高くなっている頃に軽い運動をすると体を動かさない場合に比べてグルコース・スパイクを軽減できます。運動といっても大げさに考える必要はなくて、例えば朝食後なら通勤の時になるべく階段を使うとか、ちょっと意識して体を動かすことが高血糖対策になり、それが糖化ストレスの抑制につながります。

もう一点重要なのが食事のとり方など、食習慣の改善です。血糖値を急激に上げないために「野菜を先に食べましょう」と言われるようになりました。最近よく聞かれる“ベジタブル・ファースト”の食べ方です。これによって食後血糖値の上がり方が緩やかになり、高血糖のピークも低くすることができます。グルコース・スパイクが軽減され、そこから起こる糖化を抑える効果が期待できるといえるでしょう。

- 毎回の食事で野菜を先に食べるのは、難しいかもしれません。

八木教授そうですね。ベジタブル・ファーストが脚光を浴びるあまり、野菜でないとダメという情報が目立ちますが、実は調べてみるとそれ以外の副菜、たとえば肉や魚であってもご飯(米飯)より先に食べることで同様の効果が得られることが報告されています。ですから、まず炭水化物以外の副菜から食べるという食習慣を身につけるとよいでしょう。

ここまで何を先に食べるかという観点でお話ししましたが、実際の食事を考えると副菜ばかりを先に食べてしまえば、ご飯だけが残ってさびしくなりますね(笑)。食事を楽しむという観点からは、できればおかずとご飯を交互に食べたいものです。その場合、血糖値の上がり方はどうかに着目して調べた面白いデータがあります。下のグラフは、うどんのみ(かけうどん)とそこに温泉玉子やサラダを添加した場合の食後血糖値の変化です。うどんだけに比べて、副菜を加えたものを食べた方が血糖値の上がり方が低いのが一目瞭然です。ここから読み取れるのは、副菜を先に食べることに効果はありますが、いっぺんに先でなくても、食事全体で副菜をしっかりとればグルコース・スパイクは抑えられるということです。逆に言えば、手軽さのあまり、おにぎりのように白いごはんやパンだけを食べることは注意した方がいいですね。

グルコース・スパイク軽減のために、炭水化物以外の副菜をとることの大切さをみてきましたが、食事においてもう一つ知っておいた方が良い情報があります。それは、糖化反応自体の抑制に効果的な食材があることです。この「抗糖化素材」と呼ぶ食品素材について次に紹介しましょう。

Column遠足のおにぎりにはワケがあった

ひと昔前、今のようにコンビニもなかった時代には、おにぎりは例えば遠足の時など、主に外に出かけた時の食事でした。これは携帯に便利という理由だけではなかったようです。ほとんどがお米、つまり糖質のかたまりのおにぎりは食後に高血糖を招きやすい食品です。しかし、行動中の食事なら、摂取した糖質をすぐにエネルギー源として使うことができ、上がった血糖値も体を動かすことで下げることができる。だから外でのおにぎりは理にかなった食事というわけです。ところが、今はコンビニで買ってきたおにぎりでお昼を済ませて、その後は室内でゴロゴロということも多いもの。糖質ばかりの食事なのに、その後に行動(運動)が伴わないのは糖化の側面から見ると問題あり、と八木先生は言います。なるほど、昔ながらの食事や生活習慣にはちゃんと意味があったのですね。